2022年04月16日 16:12
ずいぶん久しぶりの投稿になる。
昨年の12月頭の「新人公演・特別公演」の時に投稿した以来だと思う。
もっと早くに投稿しようと思っていたのだけどなかなか心が治まらずズルズルと4月に入ってしまった。
自分にとって受け入れづらい現実をどうにか整理しようと踠いて時間だけが過ぎていった感じだ。いや踠いたと言っても何を努力するわけでもなく、ただ本当に心をどこかに持っていかれたままダラダラと時間だけが通過するのを見守っていたに過ぎない。
昨年、11月29日に高橋利行君が亡くなった。
「新人公演・特別公演」の仕込みの日だった。死因は脳出血。
高橋利行君は僕にとって友であり、仕事仲間であり、同じ夢を持つ同士でもあり25年ずっと一緒に時を共にしてきた僕の半身ともいえる存在だ。その歴史は今の劇団、ショーGEKIよりも長い。
ショーGEKIにおいては1999年の旗揚げ公演の「チャンピオン」から関わり、以後ずっと劇団の全ての作品の映像製作、舞台撮影と編集を任せてきた。
高橋君は映像監督として本当に才能のある人物だった。特に彼の映像編集能力はすばらしく、私を含め彼と共に仕事をした人は皆、彼の仕事を称賛していた。
僕と高橋君との出会いは25年前にさかのぼる。
それはテレビ朝日の「はぐれ刑事純情派」の正月特番の編集だった。当時まだ30代半ばの僕は人生最多忙時期で、完全に崩壊していたスケジュールをこなしていた。いや実際には全然こなしきれてはなかった。
前の劇団の舞台(脚本・演出)に、テレビ番組(構成・演出)が常に数本、さらにサンリオピューロランドの舞台(企画・脚本・演出)と学校の講師・・。そんな中で高橋君と出会った。
僕は20代からテレビやCMなどの映像の演出もやってきたけれど、ずっと編集作業だけは苦だった。企画したり撮影したりはすごく楽しく精力的に取り組んでいたんだけど、編集作業になるといつも苦しんしまっていた。そんな時、当時その「はぐれ刑事純情派」の特別番組を製作していた東映のアシストプロデューサーが僕に一人の若者を紹介してくれた。それが高橋君だった。
紹介のキッカケは高橋君がその東映のアシストプロデューサーの大学の同期で今ちょうど会社を辞めてフリーになったばかりだから時間があるのでということだった。まさにタイミングだった。
この東映の当時アシストプロデューサーだったのは高野照子さんという方で現在は作家として活躍されている。彼女のおかげで僕は高橋君と出会えたことになる。
最初の高橋君の印象は無口で大人しい若者・・若者、そうまだ高橋君は20代だった。
でもすぐに僕は高橋君の能力に感銘をうけることになる。
撮影と違って編集作業は本当に根気のいる仕事なのだ。撮影した映像を何度も何度も繰り返し見てはつなげて、さらにそこから数コマ(1秒の1/26単位)で切ったり追加したり・・。昔から根気作業が大の苦手だった僕の最も苦手な作業。
しかし寡黙な高橋君は編集スタジオでまさに黙々と根気よく作業を続け、その編集も最初から監督である僕の意図を全て察してさらに彼なりにグレードアップしていく。この最初に出会いの時からすぐに僕はこれからずっと僕の作品の映像編集は全て高橋君にやってもらおうと決めたのだ。
この決断は僕にとって衝撃的なことだった。
当時の僕は劇団を持っていたとはいえ、人との繋がりはわりと刹那的なものだとずっと信じていたからだ。これは小学、中学と転校を繰り返してきた環境のせいだと思っている。
高橋君と出会った時に下したこの決断は僕の人生において正しかったと言いきれる数少ない決断の一つだ。以後昨年まで25年間、僕は高橋君と共にずっと映像を作ってきたのだから。
映像で僕がフリーでここまでやってこられたのは本当に高橋君がいてくれたからだ。
いや映像の仕事だけじゃなく劇団でも映像の全てを高橋君に任せられたから僕は舞台に集中出来たのだ。
高橋君との時間の共有感は本当に深い。劇団だけでもずいぶんだが、彼と撮影で回った海外も本当に多い。アメリカ、ロシア、イギリス、カナダ、ベルギー、イタリア、ギリシャ、UAE,カタール、マダカスカル、南アフリカ、モザンビーク、香港、オーストラリア、モーリシャス、バハマ、キューバ・・まだあったかな。
いつも一緒に海外に行く時は仕事だったから、今度は遊びで台湾に行こうと話をしていたらコロナ禍になってしまい、そのまま約束は果たせず。
高橋君が亡くなったことは完全に消化は出来ない。出来るわけがない。
一緒にやってきた時間はこれからも僕の中に残り続けていく。
だからこれからも高橋君が共にいるという気持ちで、一緒に描いた夢を追いかけたいと思う。
これを言い切れるのに4カ月もかかってしまった。
いろいろ再起動だ。

写真は20年前、高橋君と撮影の合間に何とか時間を作ってロンドンの中華街に繰り出した時のもの。二人ともお米が食べたくてタクシー飛ばして駆け込んだな。
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